意外とみんなクーリングで悩んでいる
風邪や感染症などにより、発熱した場合、みなさんはどのような対応をしていますか?
「熱が出たらすぐ冷やさないと!」
「熱があっても、冷やさないほうがいいって聞いたこともあるけど?」
「寒いから冷やしたくないって言われちゃったけど、どうしよう?」
看護や介護をされている方は、誰もが直面する悩みです。
私も新人の頃は、よく叱られていました。
発熱した患者さんをクーリングしたら、
「なんでクーリングしてるの!?」
と叱られたり、、、
前回叱られたからとクーリングしないでいたら、
「なんでクーリングしないの!?」
と叱られ。。。
だからと言って、“なぜそれがダメだったか”は、教えてもらえず。。。
同じように発熱時の対応で悩んでいる方は多く、よく相談を受けます。
ここの訪問していただけたということは、画面の前のあなたもその一人なのでは?
ここで、一緒にお勉強して、一緒に発熱時の対応を学びましょう!
専門職でない方にもわかりやすいように解説します。
なぜ発熱するの?

まずは、なぜ発熱するのかを理解できていますか?
体温調整の指令を出しているのは、脳です。
脳の視床下部が体温調整中枢になっています。
ここでは、風邪などで病原体が侵入した場合を例に、発熱の作用を解説します。
病原体が体内に入ってくると、細菌やマクロファージによる化学的刺激が
「なんか、変なの入ってきたから、体温上げて方がいいよ!」
と、脳に教えてあげます。
すると、視床下部がその情報を受け取り、
「38℃まで体温を上げろ!!」
と、体温調整のセットポイントが上昇します。
これにより、発熱します。
発熱による2つのメリット

「発熱したら下げないと!」
と、デメリットなイメージですが、発熱することによるメリットもあるのです。
免疫機能を高める
発熱によるメリットの1つ目は、免疫機能を高めてくれることです!
そこで活躍するのが、先ほど出てきた、マクロファージです。
マクロファージは、白血球の一つです。
免疫機能の中でも、自然免疫においてとても重要な役割を担っています。
発熱することによって、自然免疫の働きを活発にすることができるのです。
病原体を死滅させる
発熱によるメリットの2つ目は、病原体の増殖を抑制してくれたり、死滅させてくれることです!
発熱により免疫力が上がるのとは反対に、病原体は発熱されてしまうと力が弱まります。
活発になった自然免疫は、体内に侵入した病原体を食べ尽くしてくれるのです。
熱が出ない方が危険な場合も
発熱には、メリットがあり、大切な防御反応だということがわかりました。
と、言うことは、発熱しない、発熱できないということは、防御機能が壊れてしまっていると言うことになります。
病原体と戦えない体になってしまっていると言うことです。
「熱がないから大丈夫!」
と、観察を怠ってしまうことは、とても危険ことになってしまいます。
高齢者は、特に、発熱できないことが多いです。
バイタルサインの変化だけでなく、
「あれ?いつもとなんか違うな。」
を大切にした観察、ケアが、異常の早期発見につながります。
私は、
「あれ?今日、いつもの時間に起きて来ないな。」
「あれ?今日、ご飯の食べ方がいつもと違うな。」
と、ほんのちょっとの変化を大切にしています。
熱は下げない方がいいの?

この流れだと、
「熱は下げない方がいいってこと?」
と、感じてしまいそうですね。
熱には、すぐに下げるべき熱と、すぐに下げない方がいい熱があります。
先ほどの病原体が侵入してきて発熱した場合は、自然免疫の防衛機能が働いて発熱していますね。
ここで熱を下げてしまうと、せっかく病原体と闘おうとしている自然免疫が負けてしまう環境を作ってしまうことになります。
この場合は、すぐに熱を下げる選択をしない方がいい発熱パターンです。
すぐに熱を下げた方がいい発熱パターンとしては、異常な高熱、熱中症や脳血管疾患由来のものなどです。
この場合は、体温を調整する機能がおかしくなってしまっているため、すぐにクーリングを行う必要があります。
“発熱の原因が何か”をきちんとアセスメントして、ケアに当たることが重要です。
クーリングの3つのポイント

クーリングも、ただ冷やせばいいというものではありません。
効果的なクーリングの3つのポイントは、、、
熱が上がり切ってからクーリング
1つ目のポイントは、熱が上がり切ってからクーリングをしましょう。
ここで、よくある質問がこちら。
「熱が上がり切ったかどうかなんてわからない。」
「39℃まで上がるんで、その後クーリングお願いします!」
と、宣言してから発熱してもらえたらいいんですけどね。
では、何を観察してクーリングのタイミングを見極めたらいいでしょうか?
そう!シバリングですね。
「震えてないかな?」
「血管収縮してないかな?」
と、観察してください。
シバリングが起きてるということは、まだ熱が上がるサインになります。
また、発汗がみられたり、血管が拡張している場合は、熱が上がり切ったサインになります。
大きな動脈の部分をクーリング
2つ目のポイントは、大きな動脈の通っている部分をクーリングしましょう。
さて、大きな動脈の通っている部分とはどこでしょう?
鼠径部や頸部、腋窩などには、大きな動脈が通っています。
体幹部からも近いため、体温を下げるために効果的な部位です。
発熱者の希望に合わせてクーリング
3つ目のポイントは、発熱者の希望に合わせてクーリングしましょう。
一番大切なポイントなのですが、ついつい症状にばかり目が行き、後回しにされてしまいがちです。
命を守るために、早急に必要なクーリングもあります。
しかし、発熱者がクーリングして欲しくないと感じていた場合、それは苦痛なケアになってしまいます。
まとめ
みんなが悩む、発熱時の対応。
ぜひ、みんなで共有し、一人で悩まないでください。
「なんで発熱しているんだろう?」
「今は、クーリングするタイミングかな?」
「熱はないけど、なんか変だな?」
と、しっかり観察し、アセスメントしてください。
適切なケアを行うことが、効果的な解熱、不快感の軽減につながります。
新人の頃、
「ガッツリ冷やさなきゃ!」
と、両腋窩をクーリングしてしまった私。
「あ、体温測れなくなっちゃった。どうしよう。」
ご想像の通り、先輩にガッツリ怒られました。
今考えると、先輩に怒られたことよりも、
「患者さん、苦痛じゃなかったかな?」
「あんなに冷やしたら、寒かっただろうな。」
と、振り返り反省しています。
ここでの学びを現場で活かして、患者さんの心に寄り添ったケアにつなげていただけたら嬉しいです。